334-C地区 2R-4Z
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新米里親体験記

皆さま、ご無沙汰しております。髙松です。
今年から不在会員にさせていただいて、
皆様とお会いする機会もめっきり少なくなってしまいました。
みなさまお元気でしょうか。
私はとっても元気・・・と言いたいところですが、
実はへとへとな毎日をおくっております。
そうです。とうとう里子ちゃんが我が家にやってきて、
晴れて念願の母親デビューをはたしたわけですが、
もう、体力の限界。だってね、冷静に見て私、
おばあちゃんの年齢なんですよね・・・(苦笑)
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去年の夏に我が家にやってきた里子ちゃんは
当時4歳半の男の子、K君です。わけあって、
きょうだいとともに児童相談所に一時保護されていました。

初めて会ったK君は、眉間にしわをよせたまま、
斜め下をずっと見ているような子でした。
近寄るとなんとなく臭いし、真夏なのに長袖のTシャツを着て、
所持品は何もありませんでした。
ただ、大好きな「カーズ」の靴を履いていてそれだけは
うれしそうに自慢していました。

カーズの靴

カーズの靴


一時保護の間、私たちはできるかぎり児童相談所に出向き
一緒に遊び、慣れてきたころに里子として我が家にやってきました。

K君は何も持ってきていませんから、下着や洋服から食器、
寝具、おもちゃ、チャイルドシートと、
とにかく大至急生活用品をそろえなくてはなりません。
でも子育てしたことがない私たち夫婦には
何を用意すれば良いかもよくわかりません。
そんな時は子育て中の事務所のスタッフや
私の関与先の事務員さんたちが心強い味方です。
いろいろ教えてもらって、結果、毎日のように「
西松屋」に通いいろいろとそろえました。
あぁ近くにお店があってよかった。

慣れてきたらK君はとてもおしゃべりです。
ずっとなにかしゃべってる。
でも、何を言っているのかよくわかりません。
滑舌が悪くて聞き取れないんです。
さらに話してる内容が、大好きなカーズの話ばかりで
登場キャラクターも知らない私には意味不明な世界。
急いでDVDを買って勉強です。

そんなふうに一緒に生活していく中で気が付いたのですが、
K君は4歳児にしては知っている言葉の数がとても少ないのです。
最初に児童相談所の人から、発達障害があるかもしれないと
言われていましたが、どちらかといえば、
知識不足、経験不足の要因のほうが大きいのではないかと
私は感じていました。

言葉だけではありません。彼はとってもやんちゃ君で、
じっとしていられません。
体力があり余っているのか、ずっと走り回っていたい子供です。
にもかかわらず、実際走らせると走り方がとてもへたくそです。
「ボクは速いんだよ」と自分では言っていましたが、
足は上がってないし、もつれてすぐ転ぶし、よ
く見れば太ももはムチムチ。
もしかしたら外で思い切り走り回ったりして
遊ぶこともなかったのかもしれません。

食事もそうです。我が家に来たときはパンとうどんばかり
食べたがっていて「おかず」をみると拒否反応をしていました。
なにが好きか聞くと「カレー」といいます。
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でも彼が言う「カレー」は
仮面ライダーがパッケージになっているレトルトのもの。
カレーが好きというより「仮面ライダー」が好きだったのです。
からあげもコロッケもハンバーグも、彼はよく知りませんでした。
そんな食習慣の影響でしょうか。
今でこそいろいろ食べるようになりましたが、
今でも「噛む」ことが苦手なようです。
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彼は、クリスマスもサンタさんもお誕生日も知りませんでした。
我が家でクリスマスツリーを飾ってサンタさんのお話をしていたら、
外でツリーを見ては「サンタさんがいるよ」というのです。
ケーキのろうそくにおびえて火を消すのもおそるおそるです。
5歳の誕生日のお祝いもぽかんとしています。

ああ、どんな環境で育てられてきたのだろうと
なんだか切なくなってしまいますが、
彼にとっては今までが普通の生活で、
むしろ新しい環境になれることのほうがストレスなんです。

少しして我が家になれたころ、
本当のお母さんの話や今まで暮らしていた家の話ばかり
している時期がありました。
多分、なぜここにいるのか疑問を感じるくらい、
気持ちに余裕ができてきたのでしょう。
と同時にやっぱりお母さんに会いたくなってしまったのだと思います。

しかし、まだ4歳といえども、
彼には覚悟を決めてもらわなくてはなりません。
私は意を決して、もう今までのおうちには帰れないこと、
しばらくは本当のお母さんに会えないこと、
ほかのきょうだいにも今は別のお母さんとお父さんがいること、
でもきっとK君が大きくなったらお母さんが迎えに来てくれること・・
そんなことを抱きしめながら話しました。
K君は泣いていました。
でも多分、K君は現実を理解して受け入れてくれたと思います。
その日以来、本当のお母さんの話はめっきり少なくなりました。
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K君は私たち夫婦にとって、本当に天使のようにかわいい子供です。
かわいくてかわいくて、毎日毎日いくら抱きしめても足りないくらいです。

それでも、本当のお母さんがK君のことを思っている限り、
私たちは、いつかはお母さんにK君を返してあげたいと思っています。
子育てがこんなにも大変なんだと私たちも今更知りました。
K君の母親は、若くしてK君を産んで、4歳半になるまで育てました。
上手には育てられなかったかもしれません。
でもそれだけで立派なことです。

K君には、いつかお母さんを支えてあげられる
大人になってほしいのです。
そして、幸せな家庭を、お母さんやいつか出会う
自分の子供たちに教えてあげてほしいと思っています。

まだまだ彼とのエピソードは続きます。
もう、書きたいことは山ほどあります。
普通の子供とは違う子育て。
ここに書いたことは彼のほんの一面で、
現実は大変なことが山積みです。
正直なところ、今までの4年半で身に着けてしまった習慣を
変えていかなくてはならないと感じる部分も少なくありません。
しかし、そう簡単には変わりません。
時間をかけて、少しずつ彼の成長を見守るしかないのです。
それは想像よりはるかに忍耐が必要なことなのです。
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私たち夫婦は、それでもとても充実した日々を過ごしています。
体力的にも大変だけど、毎日毎日本当に楽しくて、
彼のことがかわいくてたまりません。
いつかこんな日々も突然終わってしまうかもしれません。
あるいは、思春期には普通よりもすさまじい反抗にあうかもしれません
(想像できてしまうところが怖い・・・)。
でも、今、このかわいくてしかたがない彼との時間を
目いっぱい楽しみたいと思っているのです。
そして、いつか彼にも、彼の人生の中で私たちと過ごした日々が
大切なものだと思ってもらえるように、
楽しい思い出をたくさん作ってあげたいと思っています。